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☟高校野球“7回制”議論に「危なっかしくて誰も獲れなくなる」プロスカウトの本音…先に導入すべきは甲子園でのコールド制? 現場のリアルな声は…
https://news.yahoo.co.jp/articles/92e1372db2dccf9844215b6910f3ed1209bb8303
この夏、日本高野連が「7イニング制導入」の検討に入ったと聞いて、「そこまで来たのか」と思った。
「タイブレーク」、「球数制限」、「継続試合」……これまで、球児たちの健康管理に対して、いくつかの策を施してきた日本高野連だから、良かれと思ったことは、あっさり制度化してしまうのかもしれないが、今回だけはちょっとお待ちくださいと、思わずにはいられない。
物ごころついた時から、「9イニング」の高校野球やプロ野球に接してきた身には、今回の7イニング制はこれまでのどんな制度改革とも違和感のレベルが違った。
スカウトの本音「危なっかしくて誰も獲れない」
「7回なんて、野球じゃないですよ! すぐ終わってしまうじゃないですか! だいたい、9イニングの高校野球やってきた選手でも、プロの練習についていけないのが何人もいるのに、7イニングになったら、危なっかしくて、誰も獲れませんよ」
あるプロ野球スカウトは聞いた途端、半ばキレたようにそう返してきた。「その前に地方大会みたいに5回コールド、7回コールドを導入するのが先でしょ」
甲子園まで来て、コールドで負けるんですか?
「だって、都市対抗だってあるでしょ、コールド」返す言葉もなかった。
「正直、甲子園で10点もリードされて、終盤の8回、9回はつらい」
だいぶ以前のこと、実際にこの甲子園で、つらい終盤を経験した元・球児とたまたま出会った。
「バンザイで故郷を送り出されて、向こうじゃ『いくつ勝つんだ、優勝だ』って、盛り上がっているのに、こっちはグラウンドでボコボコにされてる。守っていると、アルプスの応援団がみんなうらめしそうにオレのほうを見てる……そう見えるんだよね、グラウンドに立っていると」
だからって、コールドがいいかどうかはわからないけれど。
「でも、応援団も辛いと思うよ、いくら『高校野球はあきらめない! 』とか言ってもさ。奇跡の逆転劇なんてそうそうないこと、わかってるんだから、アルプスだって」
この春から、金属バットの仕様が変わった。バットの直径が3ミリ細くなって、そのぶん、ジャストミートの確率が下がり、バットを形成する金属の肉厚が1ミリ厚くなって、芯を食わなかった打球の飛距離が落ちた。長打が減り、大量点の試合が減り、僅少差の試合が増えて試合時間も短くなる傾向にある――。そう語る指導者の方も多く、選手たちの健康管理にいくらかは寄与しているようだが、「決定打」にはなっていない。
監督「7イニングなら公立校が有利に」
戦術的には「7イニング制」はどうなのか?
「公立校が有利になりますね」 公立校を率いて30年、ベテラン監督が言いきった。「7回投げきれる心身共にタフないいピッチャーを育てて、なんとか2~3点獲れば、強豪を倒せる機会もグッと増える」
今までも「もうひと息」という場面は何度かあったらしいが、そのたびやられていたのが、終盤の2イニング。8回、9回だという。
「こっちのピッチャーがへばるのを、球数投げさせて、セーフティ(バント)で動かして、じっと待っている。こっちのピッチャーに疲れや、スキや、焦りが見えたところで、ワッと。強いところは、死んだふりしているのが、すごく上手いからね」
確かにこの夏の甲子園でも、思い当たるような試合がいくつかあった。7イニングならぎりぎり逃げきれる場面……確かに、増えるのかもしれない。
この夏の甲子園。開会式での選手宣誓。「僕たちには夢があります。この先の100年も、ここ甲子園が聖地であり続けること。そして、僕たち球児の憧れの地であり続けることです」
智弁学園和歌山高・辻旭陽(あさひ)主将から発せられたメッセージ。 私には、「いつまでもこの甲子園で、9イニングの野球をやらせてください!」。そんな切ない叫びにも聞こえていた。
「頼んでないっす! 自分ら、7イニングなんて、誰も頼んでないっす!」
甲子園球児の一人が返してきた「答え」は、切実なものだった。「自分たちはこの暑さの中で9イニングの野球をやるために、冬からずっときつい練習やってきましたから」
面白い発言もあった。「地方大会でめっちゃ暑い日があって、途中から空が真っ黒になって、カミナリが鳴って、試合中断になって。結局、すごい雨で中止になったんですけど、雨天中止があるんなら、高温多湿中止があってもいいよな……って言ってたヤツに、みんなでそれは正しいかもしれないって」
この甲子園では試合に出られなかったある選手の言葉は、胸を打った。「中学までは自分たち、軟式でも、シニア、ボーイズでも、7イニングの野球でした。それが高校生になって9イニングの野球になって、僕は初めて野球選手になれたような実感がありました。大人になれた実感っていうのか。
そのことが普段の生活でも子供みたいなことしてちゃいけないという自覚とか、自律とかにつながったように思うんです。僕にとっての<9イニング>は、イコール<大人の世界>だったように思います。まわりはどう見ているのかわかりませんけど(笑)」
当事者である球児たちがどう考えるのか
約束事を新たに決めたり、変えたりする時、いちばん肝心なのは、当事者つまり「主人公たち」が、はたして何を望むのか。その一点に尽きるのではないだろうか。
この夏の福岡大会。遠い所で、会場まで2時間以上もかかる開会式への参加を「希望制」にしたところ、およそ4割の54校が参加しなかったという。その多くが、選手たちの議論、討論による決定だったそうだ。見識による勇断だと思う。
この先の高校野球を、7イニングにするのか、9イニングのままにするのか。そうした「命題」をこの先、決して高校野球をやらない大人たちだけが論じ合って、果たしてどんな「正解」が生み出せるというのか。実際にこの先の高校野球でプレーしていく高校球児たちが、いったい何を望むのか。その「確認」がまずあって、その次に来るのが、大人たちの議論なのではないか。
まずは時間とお金とエネルギーを費やして、アンケートでもなんでもして「精査」した上で、選手たちがどうしたいのか、その願いの「ほんとのところ」を吸い上げること。
大人たちの本当の仕事とは、球児たちの「ほんとのところ」を実現させるために、組織の叡知を集めて、懸命に知恵を絞ること。ただ、その一点に尽きるように思う。
📝「甲子園の階段でぐったりするファン」「車イスで運ばれた体調不良の女性」酷暑の高校野球…現地で私が見た異変「観戦ルール、2つの改革案」
https://news.yahoo.co.jp/articles/4705d7b0844e885d90edcffe8a464f1138749c6a
夏の甲子園に通い始めてから35年になるが、今年の夏が体感的にはいちばん暑かった。
今年は8月13日から15日にかけ、3日間通ったが(13日、14日は銀傘が覆う日陰の中央指定席上段、15日はアルプススタンド)、13日には入場時点で「異変」が起きていた。
13日は気温が上がり、近隣の神戸市の最高気温は36.4度。私が球場に向かう途中、「バーチャル高校野球」で見ていた第2試合では、石橋(栃木)の投手、入江祥太が足を攣ってしまい手当の時間が取られていた。
ようやく球場に到着し、8号門から入って3階まで上がると、通路から青空がのぞく。最高の瞬間である。ところが、そこから先が渋滞している。「何事だ?」と思っていると、車いすが通るので、みんなが待っているようだった。ハンディキャップを持つ人が通るのかと思っていたら、違った。体調不良になった女性が車いすで運ばれていくところだった。
気を付けようと思いながら記者席横のシートに落ち着く。
階段でぐったりしているファン
ちなみに、私が中央指定席上段にこだわるのには、理由がある。2013年、東北勢から日大山形、花巻東の両校が準決勝に進んだとあって、東北出身の私は勇んで甲子園に出向いた。席は中央席下段だったが(当時はまだ指定ではなかった)、とにかく日を避ける余地がなかった。その観戦後、私は感染症(いわゆるプール熱)を発症した。おそらく、甲子園観戦によって免疫力が低下していたと思われる。そこで、指定席が取れるようになってからは、直射日光を避けられる上段を押さえるようにしている。
ところが、8月13日は種類の違う暑さにやられた。この日の午後はあまり風が吹いておらず、日陰であっても、サウナのなかで観戦しているようだった。
智弁和歌山対霞ヶ浦の第3試合が始まってからも、異変は続いた。試合が進んでいる最中も、顔色が真っ青になった女性が階段を上がってくるのを見た。
5回終了時のクーリングタイムの時にトイレに行くと、階段に座ってぐったりしている人がいる。係の人に連絡しようかと思ったほどだ。
ここからは推測になるが、朝の第1試合からずっと観戦していたのではないか? 特にお盆の時期は、家族で甲子園観戦に訪れている場合が多い。近隣の県からだと、8時プレーボールの第1試合に間に合うように早朝に自宅を出発するケースが多いと聞いた。東京の球場ではまずお目にかかれない大型のクーラーボックスを持参している家族が目立つのも、夏の甲子園の特徴である。
しかし、睡眠時間を削って来場しているとしたら、体調不良のリスクは高まる。また、自分でも戒めているのは「午前中のビール」だ。実際、第1試合からビールを楽しむ人たちはいる。しかし利尿作用があるビールは、脱水症状を招きやすいという知識だけはあるから、控えるようになった。個人的なルールとしては、午後開始の第3試合までは我慢するようにしている。とにかく自己防衛で臨むしかない。
選手の保護者も横になり…
そして第3試合でも、智弁和歌山、霞ヶ浦の選手たちが、両校2人ずつ、手当をする時間が取られた。やはり、気温が高くなってくる第2試合、第3試合、内外野の守備についているだけで過酷だ。
翌日は一緒に観戦に行った娘と相談し、第1試合、第2試合だけの観戦とした。
2年前の大会では、わが故郷の代表、仙台育英優勝への期待が高まったこともあり、準々決勝は朝から4試合、すべて見た。暑いことは暑かったが、それでもしのげないことはなかった。しかし、今年の暑さは怖い。2試合だけ見るのが安全と判断した。
第1試合がセンバツ優勝の健大高崎対智弁学園、第2試合が大阪桐蔭対小松大谷という好カードが続いた。結果的に、大阪桐蔭が敗れるという波乱を目撃することになったが、試合終了後、甲子園歴史館に向かうために一塁側の外周を歩いていくと、ちょっとした木陰のスペースに大阪桐蔭の保護者と思われる人たちが集っていた。なかに、横になって介抱されている女性がいた。一塁側のアルプススタンドもまた、過酷な環境である。無事を祈りながら、センター方向へと歩を進めた。歴史館の展示物だけでなく、「涼」を求めていた。
観戦ファンのための「2つの改革案」
気候変動を受け、夏の甲子園は暑さ対策のための改革が推進中である。
今回、3日間だけ行われた2部制の導入は大会終了後にレビューが行われ、おそらくは拡大の方向で検討されるのではないか(問題は第4試合を行った場合の試合終了時間だろうか? )。
2部制の導入を聞いた時は、「はて?」と疑問に思ったが、実際に例年とは違う蒸し暑さを体感すると、合理的なのかと思う(余談だが、新聞記者たちの中には2部制の導入によって労働時間が増え、かえって大変になっている人もいると聞く)。
また、他にもリスクを減らす方法はあると思う。ひとつは、途中退場を認めることだ。いま、甲子園の観戦では一度退場してしまったら再入場は認められていない。
もし、「途中退場―再入場」が認められれば(大相撲の国技館のように一度だけ再入場OKとか)、近隣のお店で休むことができる。たとえば、スターバックス阪神甲子園駅前店でフラペチーノを飲みながら、壁に架かった虎の絵を見ているだけでも、だいぶ助かる。
また、提案したいのは、ウィンブルドンのリセールシステムだ。ウィンブルドンでは帰宅する人が「チケットボックス」に自分のチケットを入れて帰る場合がある。
ありがたいことに、その返却されたチケットは、すぐにリセールに回されるのだ。それを目当てに並ぶ人もいる。これは本当に合理的な仕組みだと思った。
神様、仏様、ダイキン様…
甲子園の第4試合で空席が目立つのは、もう帰ってしまった人がたくさんいるからで(最近は空席状況によって途中で発売する日もあるようだが)、リセールがあると分かっていれば、暑さを避けて観戦に出かけることも可能だ。第4試合だったら、三塁側内野スタンドに座り、一塁側スタンドの隙間からのぞく西陽を見ながらビールを飲むのは、最高の体験である。
試合、大会の進行に関しては暑熱対策が進んでいるが、観客にやさしい大会になって欲しいと思う。
今年の甲子園で「涼」を感じた瞬間といえば、試合間に通路に設置されたダイキンの強力なクーラーのお世話になった時だけである。私だけではない。観戦に訪れたみなさん、「ダイキン様」に向かい、頭を垂れて涼む姿はなにかしら神々しいものがあったのでした。
嗚呼、神様、仏様、ダイキン様。私も黙ってその涼風を浴びたのでありました。
📝「大社旋風」球児には地方大会から“神々しさ” 公立校が生んだ熱狂「動いた歴史」の先に見据えるもの
https://news.yahoo.co.jp/articles/b7d19c8560854f2c6991cbb1e7c5189bd71110fa
第106回全国高校野球選手権大会での島根・大社高校(以下大社)の活躍が記憶に新しい。強豪校を次々に撃破してのベスト8進出は多くの人々を熱くさせた。しかし地元関係者たちは浮かれることなく、次を見据えて新たなスタートを切っている。
■~帰校した翌日、出雲大社の商店街を挨拶回り~
「石飛(文太)監督なら、さっきまでその辺にいましたよ」と地元・山陰放送アナウンサーの山根伸志氏は、出雲大社神門通りの商店街で声をかけられた。
「大社は昨日(8月20日)、甲子園から帰ったばかり。帰校した際には350人近い出迎えの人々が集まったことも話題になりました。疲れているはずなのに、翌日の午前中には挨拶回りをしていたのに驚きました」
石飛監督は大社カラーの紫色のシャツを着用、商店街を回ってお礼を伝えていたと聞いた。
「石飛監督らしい。インタビューなどを見た人は多いと思いますが、あのままの実直な方です。取材に伺うと、いつも時間を割いて誠実に対応してくれます。『時の人』となっても、何も変わらないようです」
今夏・島根大会でも大社戦の実況を務めた。この日(8月21日)は、大社フィーバーの余韻が残る町をレポートしに現地へ足を運んでいたところだった。
■~選手からは神々しさ、監督からは悲壮感~
山根氏は同局入社後、30年近く高校野球取材に携わっている。大社について聞くにはうってつけの人物だ。
「結果論ですが、島根大会の決勝戦前に選手から神々しさのようなものを感じた。自信というか、誇り高い表情が見て取れた。甲子園に出るのだけが目標ではない感じで、手応えがあったのかな、と思ってしまいます」
「逆に石飛監督には悲壮感のようなものを感じた。絶対に甲子園に出なければダメだ、というよう雰囲気。3年前の決勝戦で同じ相手(=石見智翠館)にノーヒッターで負けた記憶がよぎったのかもしれません。口には出さないですが、表情や雰囲気から伝わってきました」
2021年の決勝戦では、石見智翠館のエース山崎琢磨(現ソフトバンク)にノーヒットに抑えられ「0-8」と大敗した。
「今年の夏の大社はノーシードでした。1戦ずつ勢いに乗り、実力と自信も積み重なった感じ。高校生は少しのきっかけで大きく伸びます。そういった時期と島根県大会、そして甲子園が重なったように感じました」
■~機動力と守備力を徹底的に活用~
「時代に合った攻撃方法と高い守備力で勝ち進んだ」と語るのは山陰放送で解説者を務め、大社を見続けている樋野徹氏。
樋野氏は同県・平田高(2020年のセンバツで21世紀枠として出場)で主将を務め、1986年夏の決勝戦では敗退。その後は社会人・住友金属でプレー、都市対抗野球5度出場(補強選手を含む)を果たした名捕手だった。
「今夏は大社らしくない野球を見せてくれた。これまでは投打にしっかりとした柱を据えて戦う印象だったが、特に攻撃面に関しては違った。機動力を生かし、どこからでも点を取れるようにした」
攻撃面では島根県大会6試合で、藤原佑の12盗塁を筆頭にチーム29盗塁が話題を呼んだ。そして左腕・馬庭優太を中心とした堅実な守備も大きな武器となった。
「守備では馬庭の成長が大きい。昨年までは変化球に頼り、落ちる系の球も多投していた。しかし3年生になり球威と制球力がアップ、真っ直ぐとスライダーを中心に勝負できていた。スタミナを保てることにも繋がった感じもする」
今春から新基準バットが導入され、各校とも苦しんだと聞く。今年の夏の甲子園では大会を通しても7本塁打しか出ないほどだった。その中で大社は対策を練り、スムーズに対応できていたようだった。
「島根大会から少ない得点を守り抜く野球をやっていたが、そのためのキーが機動力。マークされたこともあり甲子園では島根大会の時のようには多くの盗塁ができなかった(4試合8盗塁)。それでも勝ち進んだことがすごいと感じた」
■~私立校の存在が島根県全体の野球レベルを引き上げている~
1回戦の報徳学園(兵庫)を皮切りに、創世館(長崎)、早稲田実業(東京)を撃破。公立校(=県立)の大社が強豪私立校を打ち負かしたことでも注目を集めた。一部では「越境留学の是非」を問う声も出ていたが、2人の受け止め方は違う。
「私立校と戦うことで自分たちの弱点が明確にわかる。その積み重ねでレベルアップできたのではないか。県内の私立校と切磋琢磨してきた結果が、今回のような躍進を生み出したのではないかと思う」(山根氏)
「越境留学して野球に打ち込む選手は覚悟が違う。それに負けまいと必死にやり続けた結果だと思う。大社に次ぐ公立校がどんどん現れ、島根野球の底上げに繋がって欲しい」(樋野氏)
大社は準々決勝で神村学園(鹿児島)に敗れるも、93年ぶりのベスト8入りという快挙を成し遂げた。試合後の石飛監督は「野球部の歴史が動いた。今後100年のスタートだ」と語った。
「島根大会の決勝戦前、過去の県大会準優勝盾を選手に見せて『もう銀色はいらないよな』と語りかけた。その後は甲子園出場どころか、ベスト8という結果まで残した。満足してもおかしくないのに、既に次を見据えているのが石飛監督らしい」(山根氏)
チームの結果とともに、アルプス席を埋めた紫軍団の熱狂的かつ紳士的な振る舞いは称賛された。「神々の国からやって来た少年たちの快進撃は、100年の甲子園でまだ続きます」(8月17日、早稲田実業戦)という名実況も生み出した。
今夏の大社フィーバーは全国を巻き込み、大きな盛り上がりを見せた。甲子園所在地の西宮が、季節外れの「神在月(かみありづき)」を迎えていたかのようだった。しかしそれらは過ぎ去ったこととして、大社は次の100年へ向けて動き出している。
☝「この夏の感動のお礼」 大社高校の甲子園費用1000万円クラファン、1週間で目標達成
https://news.yahoo.co.jp/articles/7b2280da174bc71b421af92529be8237d33a6033
第106回全国高校野球選手権大会で、8強入りした大社。同校が甲子園出場にかかった費用を募るため行ったクラウドファンディング(CF)で、25日に目標の1千万円に達した。開始からわずか1週間で達成した。
CFは準々決勝があった19日に開始。ほとんどの選手が地元出身の公立校ながら、次々と強豪を打ち破る姿がSNSで話題となり、同校の卒業生たちがXで寄付を呼びかけると、「この夏の感動のお礼」などとして全国の約2千人から寄付金が寄せられた。
寄付金は選手たちの宿泊費や、スタンドに詰めかけた応援団のバスの交通費に充てられる予定。黒崎孝治教頭は「勝ち進むたびに、応援の声が増えていった。県外の方からも多く支援をいただいてありがたい」と話した。
☟健大高崎の2年生エース・佐藤 トミー・ジョン手術で復帰まで約8カ月 今春センバツV貢献
https://news.yahoo.co.jp/articles/baa6d9dddf9ca5d5d200a143cd3b0e1111fc0152
今春の選抜で優勝した健大高崎(群馬)のエース左腕・佐藤龍月(りゅうが=2年)が左肘内側側副じん帯再建術(通称トミー・ジョン手術)を30日に受けることが22日、分かった。復帰まで約8カ月の見込みとなった。
佐藤は今春選抜で5試合に登板し、計22回無失点で初優勝に貢献。今夏の群馬大会でも背番号1として優勝に導いた。だが、大会後に左肘のじん帯損傷と疲労骨折が判明。2回戦で敗退した甲子園ではベンチ入りメンバーから外れ、目標のプロ入りも念頭に手術を決断した。
加藤大成新主将(2年)がこの日就任した新チームで、佐藤は来夏の群馬大会での投手復帰を目指し、それまでは打者としてのプレーも見据える。
https://news.yahoo.co.jp/articles/92e1372db2dccf9844215b6910f3ed1209bb8303
この夏、日本高野連が「7イニング制導入」の検討に入ったと聞いて、「そこまで来たのか」と思った。
「タイブレーク」、「球数制限」、「継続試合」……これまで、球児たちの健康管理に対して、いくつかの策を施してきた日本高野連だから、良かれと思ったことは、あっさり制度化してしまうのかもしれないが、今回だけはちょっとお待ちくださいと、思わずにはいられない。
物ごころついた時から、「9イニング」の高校野球やプロ野球に接してきた身には、今回の7イニング制はこれまでのどんな制度改革とも違和感のレベルが違った。
スカウトの本音「危なっかしくて誰も獲れない」
「7回なんて、野球じゃないですよ! すぐ終わってしまうじゃないですか! だいたい、9イニングの高校野球やってきた選手でも、プロの練習についていけないのが何人もいるのに、7イニングになったら、危なっかしくて、誰も獲れませんよ」
あるプロ野球スカウトは聞いた途端、半ばキレたようにそう返してきた。「その前に地方大会みたいに5回コールド、7回コールドを導入するのが先でしょ」
甲子園まで来て、コールドで負けるんですか?
「だって、都市対抗だってあるでしょ、コールド」返す言葉もなかった。
「正直、甲子園で10点もリードされて、終盤の8回、9回はつらい」
だいぶ以前のこと、実際にこの甲子園で、つらい終盤を経験した元・球児とたまたま出会った。
「バンザイで故郷を送り出されて、向こうじゃ『いくつ勝つんだ、優勝だ』って、盛り上がっているのに、こっちはグラウンドでボコボコにされてる。守っていると、アルプスの応援団がみんなうらめしそうにオレのほうを見てる……そう見えるんだよね、グラウンドに立っていると」
だからって、コールドがいいかどうかはわからないけれど。
「でも、応援団も辛いと思うよ、いくら『高校野球はあきらめない! 』とか言ってもさ。奇跡の逆転劇なんてそうそうないこと、わかってるんだから、アルプスだって」
この春から、金属バットの仕様が変わった。バットの直径が3ミリ細くなって、そのぶん、ジャストミートの確率が下がり、バットを形成する金属の肉厚が1ミリ厚くなって、芯を食わなかった打球の飛距離が落ちた。長打が減り、大量点の試合が減り、僅少差の試合が増えて試合時間も短くなる傾向にある――。そう語る指導者の方も多く、選手たちの健康管理にいくらかは寄与しているようだが、「決定打」にはなっていない。
監督「7イニングなら公立校が有利に」
戦術的には「7イニング制」はどうなのか?
「公立校が有利になりますね」 公立校を率いて30年、ベテラン監督が言いきった。「7回投げきれる心身共にタフないいピッチャーを育てて、なんとか2~3点獲れば、強豪を倒せる機会もグッと増える」
今までも「もうひと息」という場面は何度かあったらしいが、そのたびやられていたのが、終盤の2イニング。8回、9回だという。
「こっちのピッチャーがへばるのを、球数投げさせて、セーフティ(バント)で動かして、じっと待っている。こっちのピッチャーに疲れや、スキや、焦りが見えたところで、ワッと。強いところは、死んだふりしているのが、すごく上手いからね」
確かにこの夏の甲子園でも、思い当たるような試合がいくつかあった。7イニングならぎりぎり逃げきれる場面……確かに、増えるのかもしれない。
この夏の甲子園。開会式での選手宣誓。「僕たちには夢があります。この先の100年も、ここ甲子園が聖地であり続けること。そして、僕たち球児の憧れの地であり続けることです」
智弁学園和歌山高・辻旭陽(あさひ)主将から発せられたメッセージ。 私には、「いつまでもこの甲子園で、9イニングの野球をやらせてください!」。そんな切ない叫びにも聞こえていた。
「頼んでないっす! 自分ら、7イニングなんて、誰も頼んでないっす!」
甲子園球児の一人が返してきた「答え」は、切実なものだった。「自分たちはこの暑さの中で9イニングの野球をやるために、冬からずっときつい練習やってきましたから」
面白い発言もあった。「地方大会でめっちゃ暑い日があって、途中から空が真っ黒になって、カミナリが鳴って、試合中断になって。結局、すごい雨で中止になったんですけど、雨天中止があるんなら、高温多湿中止があってもいいよな……って言ってたヤツに、みんなでそれは正しいかもしれないって」
この甲子園では試合に出られなかったある選手の言葉は、胸を打った。「中学までは自分たち、軟式でも、シニア、ボーイズでも、7イニングの野球でした。それが高校生になって9イニングの野球になって、僕は初めて野球選手になれたような実感がありました。大人になれた実感っていうのか。
そのことが普段の生活でも子供みたいなことしてちゃいけないという自覚とか、自律とかにつながったように思うんです。僕にとっての<9イニング>は、イコール<大人の世界>だったように思います。まわりはどう見ているのかわかりませんけど(笑)」
当事者である球児たちがどう考えるのか
約束事を新たに決めたり、変えたりする時、いちばん肝心なのは、当事者つまり「主人公たち」が、はたして何を望むのか。その一点に尽きるのではないだろうか。
この夏の福岡大会。遠い所で、会場まで2時間以上もかかる開会式への参加を「希望制」にしたところ、およそ4割の54校が参加しなかったという。その多くが、選手たちの議論、討論による決定だったそうだ。見識による勇断だと思う。
この先の高校野球を、7イニングにするのか、9イニングのままにするのか。そうした「命題」をこの先、決して高校野球をやらない大人たちだけが論じ合って、果たしてどんな「正解」が生み出せるというのか。実際にこの先の高校野球でプレーしていく高校球児たちが、いったい何を望むのか。その「確認」がまずあって、その次に来るのが、大人たちの議論なのではないか。
まずは時間とお金とエネルギーを費やして、アンケートでもなんでもして「精査」した上で、選手たちがどうしたいのか、その願いの「ほんとのところ」を吸い上げること。
大人たちの本当の仕事とは、球児たちの「ほんとのところ」を実現させるために、組織の叡知を集めて、懸命に知恵を絞ること。ただ、その一点に尽きるように思う。
📝「甲子園の階段でぐったりするファン」「車イスで運ばれた体調不良の女性」酷暑の高校野球…現地で私が見た異変「観戦ルール、2つの改革案」
https://news.yahoo.co.jp/articles/4705d7b0844e885d90edcffe8a464f1138749c6a
夏の甲子園に通い始めてから35年になるが、今年の夏が体感的にはいちばん暑かった。
今年は8月13日から15日にかけ、3日間通ったが(13日、14日は銀傘が覆う日陰の中央指定席上段、15日はアルプススタンド)、13日には入場時点で「異変」が起きていた。
13日は気温が上がり、近隣の神戸市の最高気温は36.4度。私が球場に向かう途中、「バーチャル高校野球」で見ていた第2試合では、石橋(栃木)の投手、入江祥太が足を攣ってしまい手当の時間が取られていた。
ようやく球場に到着し、8号門から入って3階まで上がると、通路から青空がのぞく。最高の瞬間である。ところが、そこから先が渋滞している。「何事だ?」と思っていると、車いすが通るので、みんなが待っているようだった。ハンディキャップを持つ人が通るのかと思っていたら、違った。体調不良になった女性が車いすで運ばれていくところだった。
気を付けようと思いながら記者席横のシートに落ち着く。
階段でぐったりしているファン
ちなみに、私が中央指定席上段にこだわるのには、理由がある。2013年、東北勢から日大山形、花巻東の両校が準決勝に進んだとあって、東北出身の私は勇んで甲子園に出向いた。席は中央席下段だったが(当時はまだ指定ではなかった)、とにかく日を避ける余地がなかった。その観戦後、私は感染症(いわゆるプール熱)を発症した。おそらく、甲子園観戦によって免疫力が低下していたと思われる。そこで、指定席が取れるようになってからは、直射日光を避けられる上段を押さえるようにしている。
ところが、8月13日は種類の違う暑さにやられた。この日の午後はあまり風が吹いておらず、日陰であっても、サウナのなかで観戦しているようだった。
智弁和歌山対霞ヶ浦の第3試合が始まってからも、異変は続いた。試合が進んでいる最中も、顔色が真っ青になった女性が階段を上がってくるのを見た。
5回終了時のクーリングタイムの時にトイレに行くと、階段に座ってぐったりしている人がいる。係の人に連絡しようかと思ったほどだ。
ここからは推測になるが、朝の第1試合からずっと観戦していたのではないか? 特にお盆の時期は、家族で甲子園観戦に訪れている場合が多い。近隣の県からだと、8時プレーボールの第1試合に間に合うように早朝に自宅を出発するケースが多いと聞いた。東京の球場ではまずお目にかかれない大型のクーラーボックスを持参している家族が目立つのも、夏の甲子園の特徴である。
しかし、睡眠時間を削って来場しているとしたら、体調不良のリスクは高まる。また、自分でも戒めているのは「午前中のビール」だ。実際、第1試合からビールを楽しむ人たちはいる。しかし利尿作用があるビールは、脱水症状を招きやすいという知識だけはあるから、控えるようになった。個人的なルールとしては、午後開始の第3試合までは我慢するようにしている。とにかく自己防衛で臨むしかない。
選手の保護者も横になり…
そして第3試合でも、智弁和歌山、霞ヶ浦の選手たちが、両校2人ずつ、手当をする時間が取られた。やはり、気温が高くなってくる第2試合、第3試合、内外野の守備についているだけで過酷だ。
翌日は一緒に観戦に行った娘と相談し、第1試合、第2試合だけの観戦とした。
2年前の大会では、わが故郷の代表、仙台育英優勝への期待が高まったこともあり、準々決勝は朝から4試合、すべて見た。暑いことは暑かったが、それでもしのげないことはなかった。しかし、今年の暑さは怖い。2試合だけ見るのが安全と判断した。
第1試合がセンバツ優勝の健大高崎対智弁学園、第2試合が大阪桐蔭対小松大谷という好カードが続いた。結果的に、大阪桐蔭が敗れるという波乱を目撃することになったが、試合終了後、甲子園歴史館に向かうために一塁側の外周を歩いていくと、ちょっとした木陰のスペースに大阪桐蔭の保護者と思われる人たちが集っていた。なかに、横になって介抱されている女性がいた。一塁側のアルプススタンドもまた、過酷な環境である。無事を祈りながら、センター方向へと歩を進めた。歴史館の展示物だけでなく、「涼」を求めていた。
観戦ファンのための「2つの改革案」
気候変動を受け、夏の甲子園は暑さ対策のための改革が推進中である。
今回、3日間だけ行われた2部制の導入は大会終了後にレビューが行われ、おそらくは拡大の方向で検討されるのではないか(問題は第4試合を行った場合の試合終了時間だろうか? )。
2部制の導入を聞いた時は、「はて?」と疑問に思ったが、実際に例年とは違う蒸し暑さを体感すると、合理的なのかと思う(余談だが、新聞記者たちの中には2部制の導入によって労働時間が増え、かえって大変になっている人もいると聞く)。
また、他にもリスクを減らす方法はあると思う。ひとつは、途中退場を認めることだ。いま、甲子園の観戦では一度退場してしまったら再入場は認められていない。
もし、「途中退場―再入場」が認められれば(大相撲の国技館のように一度だけ再入場OKとか)、近隣のお店で休むことができる。たとえば、スターバックス阪神甲子園駅前店でフラペチーノを飲みながら、壁に架かった虎の絵を見ているだけでも、だいぶ助かる。
また、提案したいのは、ウィンブルドンのリセールシステムだ。ウィンブルドンでは帰宅する人が「チケットボックス」に自分のチケットを入れて帰る場合がある。
ありがたいことに、その返却されたチケットは、すぐにリセールに回されるのだ。それを目当てに並ぶ人もいる。これは本当に合理的な仕組みだと思った。
神様、仏様、ダイキン様…
甲子園の第4試合で空席が目立つのは、もう帰ってしまった人がたくさんいるからで(最近は空席状況によって途中で発売する日もあるようだが)、リセールがあると分かっていれば、暑さを避けて観戦に出かけることも可能だ。第4試合だったら、三塁側内野スタンドに座り、一塁側スタンドの隙間からのぞく西陽を見ながらビールを飲むのは、最高の体験である。
試合、大会の進行に関しては暑熱対策が進んでいるが、観客にやさしい大会になって欲しいと思う。
今年の甲子園で「涼」を感じた瞬間といえば、試合間に通路に設置されたダイキンの強力なクーラーのお世話になった時だけである。私だけではない。観戦に訪れたみなさん、「ダイキン様」に向かい、頭を垂れて涼む姿はなにかしら神々しいものがあったのでした。
嗚呼、神様、仏様、ダイキン様。私も黙ってその涼風を浴びたのでありました。
📝「大社旋風」球児には地方大会から“神々しさ” 公立校が生んだ熱狂「動いた歴史」の先に見据えるもの
https://news.yahoo.co.jp/articles/b7d19c8560854f2c6991cbb1e7c5189bd71110fa
第106回全国高校野球選手権大会での島根・大社高校(以下大社)の活躍が記憶に新しい。強豪校を次々に撃破してのベスト8進出は多くの人々を熱くさせた。しかし地元関係者たちは浮かれることなく、次を見据えて新たなスタートを切っている。
■~帰校した翌日、出雲大社の商店街を挨拶回り~
「石飛(文太)監督なら、さっきまでその辺にいましたよ」と地元・山陰放送アナウンサーの山根伸志氏は、出雲大社神門通りの商店街で声をかけられた。
「大社は昨日(8月20日)、甲子園から帰ったばかり。帰校した際には350人近い出迎えの人々が集まったことも話題になりました。疲れているはずなのに、翌日の午前中には挨拶回りをしていたのに驚きました」
石飛監督は大社カラーの紫色のシャツを着用、商店街を回ってお礼を伝えていたと聞いた。
「石飛監督らしい。インタビューなどを見た人は多いと思いますが、あのままの実直な方です。取材に伺うと、いつも時間を割いて誠実に対応してくれます。『時の人』となっても、何も変わらないようです」
今夏・島根大会でも大社戦の実況を務めた。この日(8月21日)は、大社フィーバーの余韻が残る町をレポートしに現地へ足を運んでいたところだった。
■~選手からは神々しさ、監督からは悲壮感~
山根氏は同局入社後、30年近く高校野球取材に携わっている。大社について聞くにはうってつけの人物だ。
「結果論ですが、島根大会の決勝戦前に選手から神々しさのようなものを感じた。自信というか、誇り高い表情が見て取れた。甲子園に出るのだけが目標ではない感じで、手応えがあったのかな、と思ってしまいます」
「逆に石飛監督には悲壮感のようなものを感じた。絶対に甲子園に出なければダメだ、というよう雰囲気。3年前の決勝戦で同じ相手(=石見智翠館)にノーヒッターで負けた記憶がよぎったのかもしれません。口には出さないですが、表情や雰囲気から伝わってきました」
2021年の決勝戦では、石見智翠館のエース山崎琢磨(現ソフトバンク)にノーヒットに抑えられ「0-8」と大敗した。
「今年の夏の大社はノーシードでした。1戦ずつ勢いに乗り、実力と自信も積み重なった感じ。高校生は少しのきっかけで大きく伸びます。そういった時期と島根県大会、そして甲子園が重なったように感じました」
■~機動力と守備力を徹底的に活用~
「時代に合った攻撃方法と高い守備力で勝ち進んだ」と語るのは山陰放送で解説者を務め、大社を見続けている樋野徹氏。
樋野氏は同県・平田高(2020年のセンバツで21世紀枠として出場)で主将を務め、1986年夏の決勝戦では敗退。その後は社会人・住友金属でプレー、都市対抗野球5度出場(補強選手を含む)を果たした名捕手だった。
「今夏は大社らしくない野球を見せてくれた。これまでは投打にしっかりとした柱を据えて戦う印象だったが、特に攻撃面に関しては違った。機動力を生かし、どこからでも点を取れるようにした」
攻撃面では島根県大会6試合で、藤原佑の12盗塁を筆頭にチーム29盗塁が話題を呼んだ。そして左腕・馬庭優太を中心とした堅実な守備も大きな武器となった。
「守備では馬庭の成長が大きい。昨年までは変化球に頼り、落ちる系の球も多投していた。しかし3年生になり球威と制球力がアップ、真っ直ぐとスライダーを中心に勝負できていた。スタミナを保てることにも繋がった感じもする」
今春から新基準バットが導入され、各校とも苦しんだと聞く。今年の夏の甲子園では大会を通しても7本塁打しか出ないほどだった。その中で大社は対策を練り、スムーズに対応できていたようだった。
「島根大会から少ない得点を守り抜く野球をやっていたが、そのためのキーが機動力。マークされたこともあり甲子園では島根大会の時のようには多くの盗塁ができなかった(4試合8盗塁)。それでも勝ち進んだことがすごいと感じた」
■~私立校の存在が島根県全体の野球レベルを引き上げている~
1回戦の報徳学園(兵庫)を皮切りに、創世館(長崎)、早稲田実業(東京)を撃破。公立校(=県立)の大社が強豪私立校を打ち負かしたことでも注目を集めた。一部では「越境留学の是非」を問う声も出ていたが、2人の受け止め方は違う。
「私立校と戦うことで自分たちの弱点が明確にわかる。その積み重ねでレベルアップできたのではないか。県内の私立校と切磋琢磨してきた結果が、今回のような躍進を生み出したのではないかと思う」(山根氏)
「越境留学して野球に打ち込む選手は覚悟が違う。それに負けまいと必死にやり続けた結果だと思う。大社に次ぐ公立校がどんどん現れ、島根野球の底上げに繋がって欲しい」(樋野氏)
大社は準々決勝で神村学園(鹿児島)に敗れるも、93年ぶりのベスト8入りという快挙を成し遂げた。試合後の石飛監督は「野球部の歴史が動いた。今後100年のスタートだ」と語った。
「島根大会の決勝戦前、過去の県大会準優勝盾を選手に見せて『もう銀色はいらないよな』と語りかけた。その後は甲子園出場どころか、ベスト8という結果まで残した。満足してもおかしくないのに、既に次を見据えているのが石飛監督らしい」(山根氏)
チームの結果とともに、アルプス席を埋めた紫軍団の熱狂的かつ紳士的な振る舞いは称賛された。「神々の国からやって来た少年たちの快進撃は、100年の甲子園でまだ続きます」(8月17日、早稲田実業戦)という名実況も生み出した。
今夏の大社フィーバーは全国を巻き込み、大きな盛り上がりを見せた。甲子園所在地の西宮が、季節外れの「神在月(かみありづき)」を迎えていたかのようだった。しかしそれらは過ぎ去ったこととして、大社は次の100年へ向けて動き出している。
☝「この夏の感動のお礼」 大社高校の甲子園費用1000万円クラファン、1週間で目標達成
https://news.yahoo.co.jp/articles/7b2280da174bc71b421af92529be8237d33a6033
第106回全国高校野球選手権大会で、8強入りした大社。同校が甲子園出場にかかった費用を募るため行ったクラウドファンディング(CF)で、25日に目標の1千万円に達した。開始からわずか1週間で達成した。
CFは準々決勝があった19日に開始。ほとんどの選手が地元出身の公立校ながら、次々と強豪を打ち破る姿がSNSで話題となり、同校の卒業生たちがXで寄付を呼びかけると、「この夏の感動のお礼」などとして全国の約2千人から寄付金が寄せられた。
寄付金は選手たちの宿泊費や、スタンドに詰めかけた応援団のバスの交通費に充てられる予定。黒崎孝治教頭は「勝ち進むたびに、応援の声が増えていった。県外の方からも多く支援をいただいてありがたい」と話した。
☟健大高崎の2年生エース・佐藤 トミー・ジョン手術で復帰まで約8カ月 今春センバツV貢献
https://news.yahoo.co.jp/articles/baa6d9dddf9ca5d5d200a143cd3b0e1111fc0152
今春の選抜で優勝した健大高崎(群馬)のエース左腕・佐藤龍月(りゅうが=2年)が左肘内側側副じん帯再建術(通称トミー・ジョン手術)を30日に受けることが22日、分かった。復帰まで約8カ月の見込みとなった。
佐藤は今春選抜で5試合に登板し、計22回無失点で初優勝に貢献。今夏の群馬大会でも背番号1として優勝に導いた。だが、大会後に左肘のじん帯損傷と疲労骨折が判明。2回戦で敗退した甲子園ではベンチ入りメンバーから外れ、目標のプロ入りも念頭に手術を決断した。
加藤大成新主将(2年)がこの日就任した新チームで、佐藤は来夏の群馬大会での投手復帰を目指し、それまでは打者としてのプレーも見据える。