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⚾今日の熱闘甲子園試合結果(1回戦)
4日目第1試合 中京大中京(愛知)-宮崎商(宮崎) 8:02~10:21
一二三四五六七八九十計HE
宮 崎 商000002100 382
中 京00020020X 4110
4日目第2試合 神村学園(鹿児島)-木更津総合(千葉) 10:57~13:31
一二三四五六七八九十計HE
木更津総001002101 573
神村学園01000241X 8101
4日目第3試合 岡山学芸館(岡山)-聖カタリナ(愛媛) 14:08~16:16
一二三四五六七八九十計HE
カタリナ000000000 051
学 芸 館00001000X 140
4日目第4試合 日本航空(山梨)-掛川西(静岡) 16:52~19:22 18:29点灯 6回表から
一二三四五六七八九十計HE
掛 川 西300100400 8151
日本航空220000000 4120
⚾明日の熱闘甲子園組み合わせ(5日目 2回戦)
08:00~ 鳴門 渦潮-早稲 田実
10:35~ 聖光 学院-鶴 岡 東
☆☆ 13:10~ 大 社 -報徳 学園
15:45~ 創 成 館-白樺 学園
📝変化球というのは、甘く入れば…迷わず振った神村学園 高嶋仁の目
https://news.yahoo.co.jp/articles/095579076bcf6712fe14a9c2a8ea7c298a9baf5d
(10日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 神村学園8―5木更津総合)
先行されて苦しい状況をはね返した神村学園。昨夏ベスト4のメンバーが多く残っており、地力を感じさせました。
同点の七回、正林輝大右翼手が後方の飛球に追いつきながら捕れず、三塁打にしてしまいます。これをきっかけに勝ち越されました。正林選手はチームの中心、今大会屈指の強打者です。
大黒柱がミスをしたことでシュンと落ち込むところですが、逆にチーム全員が燃えたような気がします。その裏、集中打で一挙4点を奪いました。
なかでも3番今岡拓夢選手の勝ち越し三塁打は見事でした。継投した2番手の右横手投げ・石沢順平投手の代わりばな、初球のスライダーを迷わず振り抜き、左中間に運びました。
甲子園で活躍するには、変化球を狙って打てることが必要条件です。変化球というのは甘く入れば、ただのスローボールみたいなもの。だから、狙ったら打ちやすいのです。
変化球の狙い打ちは、木更津総合にも見られました。クーリングタイム明けの六回表、先頭の庄村佑心選手、4番の井上陸選手がいずれも初球の変化球を安打し、2点を奪いました。
残念だったのは守備の乱れです。3失策に加え、内野手が打球を待って内野安打にしたり、外野手が前に突っ込みすぎて後逸して長打にするなど記録に表れないミスもありました。
甲子園では、防げるミスは防がないと勝てません。
📣甲子園に導入された朝夕2部制 長い一日になりました
https://news.yahoo.co.jp/articles/99c8d71e8c05c5eb567f1eae69812f9a287d8a84
年々、夏の暑さが増している中、今大会は第3日までは一日3試合を「午前の部」と「夕方の部」に分ける「朝夕2部制」が導入された。
熱中症対策のため、猛暑の時間帯を避けた措置だという。第1日は午前8時30分から開会式を行い、第1試合は午前10時、それから第2試合は午後4時、第3試合は同6時30分の開始予定で、プロ野球のナイターの開始時間より遅い設定だった。第2、3日は第1試合が8時、第2試合が10時35分、それから空いて第3試合は午後5時から行われた。
この3日間のチケットは午前と午後で別になっており、観客を入れ替えた。ただ、高校野球の場合は一日通して3試合、4試合と楽しむ愛好家が多い。それだけに、午後の1試合だけではちょっと…と考えた人が多かったのだろう、空席がかなり目立った。
長~い一日。第1日の第3試を戦った智弁学園のナインは開会式出席のため午前5時10時起床。式後にいったん宿舎に戻って昼寝の時間も設けられたというが、ほとんどの選手は寝られなかったという。しかも、第3試合の開始は予定より遅れて午後6時52分になったうえ、延長十一回までもつれて終了は午後9時36分! 普段は寮で午後9時半就寝だというから、いつもは布団に入っている時刻に試合をしていたことになる。
取材する記者も大変だった。開会式から第3試合までカバーしようとすれば、暑い中、半日も甲子園球場にいなければならない。しかも初日は第3試合終了後に2部制を検証する高野連の記者会見もあったので、夜11時まで甲子園で原稿を書くことに。なんと15時間以上の勤務となってしまった。
💢甲子園応援団にハプニング 高速道路渋滞で到着遅れる…掛川西-日本航空の第4試合
https://news.yahoo.co.jp/articles/f63a912caae52fef1036c762a3d932eec81f9ab4
大会本部が発表
第106回全国高校野球選手権大会の大会本部は10日、第4試合の掛川西(静岡)-日本航空(山梨)の応援団が高速道路の渋滞のため到着が遅れていると発表した。
試合は午後4時45分に開始予定。掛川西はすべての応援団バス(44台)が到着済だが、駐車場からの移動などのために全員の入場までまだ時間がかかる見込みだという。
日本航空の応援団バス10台は、先頭の1台が到着しており、残りのバスも順次到着するが全員の入場には時間要すると発表された。
👣宮崎商、アクシデントで7度Vの強豪からの金星逃す 令和の県勢初勝利ならず
https://news.yahoo.co.jp/articles/6eaec6cc301b999f059f13b3de4f4bb76a9d1028
◆全国高校野球選手権1回戦 中京大中京4―3宮崎商(10日・甲子園)
夏の甲子園7度優勝を誇る強豪からの金星は、思わぬアクシデントで遠のいた。16年ぶりに夏の甲子園のグラウンドに立った宮崎商は中京大中京を相手に1点差の惜敗。令和に入って県勢未勝利の甲子園で初勝利を刻めなかった。「選手たちが頑張って自分たちの展開でゲームを運んでいたんですけど。私がいろいろしてあげれれば逃げ切れと思うんですが、悔いが残りました」と橋口光朗監督は一度はリードを奪う展開から逆転を許した惜敗に悔しさを見せた。
7回までは互角の戦いだった。4回に先制を許したが、6回に同点に追いつき7回に4番上山純平(3年)の適時打で勝ち越しを決めた。残り2イニングを必死に守って逃げ切るだけ。「最後に1点上回って勝つ」。1年間取り組んできた「宮商野球」を大舞台でそのまま体現していた。
ところが7回裏にアクシデントが起きた。宮崎大会で遊撃と抑え投手の2役でチームを勝利に導いてきた中村奈一輝(3年)が守備中に左脚のふくらはぎがつり、マウンドに立てなくなったのだ。治療を経て遊撃に戻ったが、宮崎大会ではピンチになればカウントの途中でも遊撃から緊急登板してリードを守ってきた「守護神」のアクシデントで、投手交代に誤算が生まれた。7回2死一、三塁から先発の上山が2連打で2失点と逆転を許した。「上山はよく頑張ったと思います。もし中村をマウンドに上げて抑えたとしても、遊撃の守備に戻れなくなる恐れがあった。彼が抜けたらチームが成り立たない」。橋口監督は精神的にもチームの支柱となっている中村の存在の大きさをわかっていた。不運なアクシデントにも橋口監督は「そういうのも含めて甲子園なので」と聖地の怖さを改めて痛感した。
中村は「先頭打者を遊ゴロに取ったとき痛みがきたんです。大丈夫かなって」。ベンチに戻り8分間の治療を受けて再び遊撃の守備につくとベンチからは「ナイキ、お前が引っ張っていけ」と声をかけられた。「みんなに支えられているんだなと思った。出るからには全力でやりきらないと試合に出ない人たちに申し訳ないと思った」。マウンドに上がらなくても遊撃の守備でみんなを引っ張ろうと気持ちを入れた。9回1死から打席に立ったが空振り三振。「足がつってでも塁に出ようと思ったんですけど、最後にカットボールに手が出てしまった。悔いが残ります」と最後の打席を振り返った。
3年前は新型コロナウイルス感染がチーム内に広がり初戦を戦わずに出場辞退した。「3年前の先輩の分も勝ちたい」と意気込んで臨んだ甲子園だった。試合の2日前には宮崎県で最大震度6強の地震が発生するなど、様々な状況が選手を取り巻いていた。「先輩の思いも背負ってプレーしようとみんなで話していた。勝てなかったけど、先輩たちに泥くさいプレーを見せられたのは良かった。宮崎の人たちにも少しでも勇気づけるプレーをできたかなとは思います」と中村は振り返る。
この悔しさは次のステージで晴らす。「プロ志望届を出します」とチームを引っ張り甲子園まで来た中村は将来をまっすぐ見つめていた。
☝「ずっとつっていました…」神村学園の主砲・正林輝大、3回から足がつりながらも最後まで見せ続けた執念
https://news.yahoo.co.jp/articles/1ff5888cb0fae935e0ca83be1f9a0023ba7f7978
◆全国高校野球選手権1回戦 木更津総合5―8神村学園(10日・甲子園)
ぐらつく自らの両足を、神村学園・正林輝大は〝主砲のプライド〟で、必死に支えていた。思いも寄らなかった〝衝撃〟に襲われたのは、空振り三振に終わった3回のこと。「その打席で右足がつって、その後の守備でも、ずっとつっていました…」。
2点差を追う6回の第3打席では、カウント2―2となった5球目の直後、木更津総合の捕手・羽根徹平の右足がつり、治療のため試合が8分間中断。再開後に正林は空振り三振も振り逃げで出塁したが「あそこで、両足がつりかけて…」。
この出塁を皮切りに、5番岩下吏玖の中越え三塁打で正林が生還するなど、3―3の同点に追いついたが、その直後の7回、木更津総合・吉沢梢真の打球が右翼・正林の頭上を襲い「風と足の影響で、追い切れませんでした」。グラブに一度は当てながらもボールを落としての三塁打となり、次打者の右犠飛で再び勝ち越しを許してしまった。
まさしく、両足は限界ギリギリだった。そんな中でも「チームとしてもいい感じで、流れっていうのが来ている感じがしていたので、ここで止めたら流れも止まっちゃうんじゃないかと思ったので、なんとか頑張ってやりました」。
7回、2番・入耒田華月の中越え二塁打で再び同点とし、3番・今岡拓夢の左越え三塁打で勝ち越して迎えた第4打席。正林は何度となく打席を外して両足を伸ばし、必死に耐えてのスイングは三ゴロも、相手の一塁悪送球でチャンスが拡大。この回一気に4点を奪って木更津総合を突き放した。
「きょうは死闘になると思ったんで、だから相手のキャッチャーの羽根君も足がつったりとか、いつも以上に選手は頑張ろうとして、いつも以上にエネルギーを使っているから、こういうことになると思っていました」と小田大介監督は、正林が最後の最後まで見せ続けた〝執念〟を褒めた。
低反発バットが採用され、大会3本塁打に終わった今春のセンバツで、文句なしのスタンドインを見せた一人が正林で、その長打力と打撃技術は、プロのスカウト陣も注目する逸材だ。2回の第1打席では、左中間へ鋭いライナーを放ちながら、木更津総合のレフト・山口然がダイビングキャッチ。「あれは相手がうまかったですね。いい打球は行ってるので、あれがヒットになってないから、と正林には悩んでほしくないですね」と小田監督。両足のアクシデントも重なり、初戦は4打席無安打に終わったが「打球としては別に全然悪くなかったんで、修正する部分も特にない」と正林。ただ、昨夏の甲子園でも足がつった経験があり「体がつらないような体作りをしてきました」。
屋外での気温が高くなると、体脂肪が体熱を放散させる作用があることを知り、鹿児島県大会中には体脂肪率を「これがベストだと思う」という12~13%をキープ。ただ甲子園に入ってから、体重を2キロ減の84キロに落とし、体調を整えたのだが「それで体脂肪率も落ちてしまったんで、足がつってしまったのかな、という感じです」と正林。暑い夏の甲子園で、体調をいかにして整えるのか、その難しさを痛感させられた一戦になったが「正林には勉強になったと思うし、それをカバーし合って勝ち上がるのがチームだと思う」と小田大介監督。3季連続の甲子園は、本気で狙う全国制覇が最終目標。主砲の〝危機〟をチーム一丸で救っての初戦突破には、大きな価値がある。
👣治療による8分間の中断で変わった流れ 木更津総合・羽根徹平「投手に申し訳ない」と涙
https://news.yahoo.co.jp/articles/79276b6c492a2f3332d80b95ff1cc3438c6043f8
木更津総合(千葉)の主砲・羽根徹平捕手(3年)が、無念の涙を流した。
6回表に3―1と勝ち越して迎えた裏の守り。1死で神村学園の4番・正林輝大右翼手(3年)を迎え、4球目を受けたあと羽根の右足ふくらはぎがつってしまった。治療のためベンチに退き、試合は8分間中断。そこで流れが変わった。
再開後、正林から空振り三振を奪ったものの、完全捕球できずボールを一塁へ。それが悪送球となって、振り逃げでの出塁を許した。続く5番・岩下吏玖三塁手(3年)の痛烈なセンターライナーに対し、中堅手がダイビングキャッチを試みたものの、打球を後逸して適時三塁打に。その後、6番・上川床勇希左翼手(3年)の中前打で同点に追いつかれた。
「流れを変えないようにしようと思ったが、自分のミスで変えてしまった。ピッチャーに申し訳ないです」と羽根は涙。7回表に再び1点をリードしたが、その裏に4点を奪われ、初戦突破を逃した。
☟日本航空エースが投球中に鼻血 詰め物入れて復帰も…直後に代打で交代 酷暑の影響か
https://news.yahoo.co.jp/articles/0a6c3715214ca024d402f6217019d6a9fcd1737b
2回の投球中に症状を訴えて治療を行った
第106回全国高校野球選手権大会で10日に行われた第4試合の掛川西(静岡)-日本航空(山梨)で、日本航空の高木秀人投手が鼻血を出し、治療のため、試合が一時中断した。
高木は2回2死一、二塁から3番打者の佐藤に初球を投げたところで、治療のためにベンチへ。数分後に左の鼻に詰め物を入れてマウンドに戻った。復帰後はそのまま佐藤を遊ゴロに打ち取った。中断の間、日本航空の選手が掛川西の走者に水分を提供するシーンも見られた。
しかし、その裏の攻撃で打順が回ってくると早川隼斗に代打を送られた。今大会では開幕した7日から9日までは、酷暑対策として、気温が高い時刻に試合を行わない2部制が導入されていたが、この日から1日4試合で例年通りのスケジュールで行われていた。
📝智辯和歌山に挑んだ和歌山南陵10人の野球部員たち エースは「もうヒジがぶち壊れてもいいから頑張るわ!」と自己最速を更新した
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/hs_other/2024/08/07/10_2/
18人の青春〜和歌山南陵高校物語(4)
7月23日、紀三井寺球場に到着すると、開場前から複数のテレビ局の取材クルーが和歌山南陵高校の応援団の一挙手一投足をカメラで追っていた。この日、和歌山南陵の野球部は和歌山大会3回戦で優勝候補筆頭の智辯和歌山と対戦することになっていた。
「レゲエ校歌」の効果を感じずにはいられない光景を目にして、甲斐三樹彦理事長はこんな言葉を口にした。
「批判もされましたけど、私は子どもたちが学校でいい表情をしてくれていれば、それでいいんです。ウチの学校は完璧ではないことは間違いないですし、それこそ『一歩前へ、一歩前へ』とやっていこうや、と考えています」
【約40人ものブラスバンドの友情応援】
和歌山南陵の吹奏楽部員は2人だけ。それでも、強力な助っ人が現れた。SNSを通じてブラスバンドの演奏者を募ったところ、約40人もの応募があったのだ。なかには山梨県から応援に駆けつけた人もいたという。
在校生唯一の女子生徒である西菊乃とともに吹奏楽部を支えてきた瀧本楓太は、感慨深そうにこんな思いを口にした。
「僕たちは自宅から学校に通っているんですけど、野球部とバスケ部のみんなは寮のガスが止まったり、ご飯が出なかったりつらい思いをしても、学校に残って頑張っていました。友だちが夜遅くまで練習している姿を見てきたので、自分も引き下がりたくなかったんです。今日はたくさんの人と応援できるのはうれしいですね」
野球部員は10人だけ。初戦の紀北農芸戦では1番打者の佐々木陸斗がスライディング時にヒザをすりむいて試合が一時中断し、捕手兼一塁手の中村聖が頭部死球を受けるハプニングもあった。さらには背番号10でチーム唯一の左打者である畑中公平が、左足ふくらはぎの肉離れを負い全力疾走ができない状況でもあった。そんなチームにあっても、監督の岡田浩輝は強気な言葉を口にした。
「南陵はここまで......と思っている人もいるかもしれませんが、私たちは勝てると思って臨みます。1回勝つことが目標ではなく、甲子園に行くためにやっていますから」
岡田監督の言葉は強がりには聞こえなかった。現にエース右腕の松下光輝という県内でも有数の好投手を擁していたからだ。
松下は身長176センチ、体重75キロのスリークォーターで、最速143キロのストレートは数字以上に体感スピードがある。初戦の紀北農芸戦では8回を投げ、12奪三振無失点と危なげない投球を見せている。
そんな松下も今年1月に右ヒジ痛を発症し、何とか今夏に間に合わせた経緯があった。部員が10人しかいないことで、「自分が試合に出なければ」という責任感が故障を悪化させるリスクもあったはずだ。それでも、松下は「10人やからこそ練習の効率が上がったり、チームワークができたりしたので、部員が少ないことは悪いとはとらえていません」と気丈に語った。
【自己最速の146キロをマーク】
松下は智辯和歌山の強打線を三者凡退に抑える快調な立ち上がりを見せる。ところが、2回裏の守備に落とし穴が待っていた。2つのエラーが絡み、智辯和歌山に2点を先取される。智辯和歌山はこの日に先発した2年生エースの渡邉颯人ら複数の好投手を擁するだけに、序盤から重い失点になってしまった。
それでも、この日も和歌山南陵の応援スタンドは元気だった。2回の攻撃開始前には「レゲエ校歌」が場内に流れた。バックネット裏スタンドは相変わらず困惑したムードだったが、和歌山南陵の応援スタンドでは校歌のリズムに合わせてタオルを左右に振る観衆が続出。上半身ユニホーム姿の甲斐理事長は一際大きな声を張り上げ、普段は物静かという和歌山南陵唯一の女子生徒・西はどすの効いた大声で「打ち返せ〜!」と叫んだ。
5回表の攻撃では、山塚虎大朗と大田拓実の連打でチャンスをつくり、和歌山南陵スタンドの盛り上がりは最高潮に達した。それでも、智辯和歌山の堅い守備陣から得点をもぎとることはできなかった。
その裏、ここまで奮闘してきた松下が智辯和歌山の上田潤一郎に本塁打を浴びるなど、5安打5失点と崩れる。得点差は7に広がった。6回裏の守備が始まる直前、松下はチームメイトの前でこんな宣言をしている。
「もうヒジがぶち壊れてもいいから頑張るわ!」
6回裏、一死から山田希翔を打席に迎えると、松下は右腕を全力で叩きつける。自己最速の144キロが出たと思ったら、次の球で145キロ、その次の球で146キロと自己最速を1球ごとに更新していく。松下はのちに「最後まであきらめずに出しきろうと思ったら、最速が出ていました」と振り返った。
試合は0対7のまま、7回コールドで和歌山南陵は敗れた。試合後、松下は涙を拭いてこんな思いを語っている。
「スタンドからいつもより大きな応援が聞こえて、力になりました」
一方で、岡田監督は「エラーからつけ込んで点をとっていくところが、やはり強豪だなと感じました」と完敗を認めた。
【10人の野球部員が引退】
岡田監督は野球部監督を務めると同時に、和歌山南陵の寮監として勤務していた。「職業として学校をやめたいと思う時期はなかったのですか?」と尋ねると、岡田監督は「もちろんありました」と語ったうえでこう続けた。
「それでも、この子たちと最後までやりたい思いが勝ちました。今日はこれだけ多くのお客さんが来てくれて、本当にありがたかったですね」
取材が終わると、選手たちは応援に訪れた家族と記念撮影に興じていた。息子を預けた家族にとっても、不安が募る3年間だったに違いない。エース右腕・松下の父親であり、保護者会会長の松下真也はこんな心境を打ち明けた。
「(和歌山南陵の経営難が報じられて)ウチは『どうする?』と聞いたら、本人が『おる』と言ったので転校はしませんでした。レトルトカレーとかスパゲティ、ラーメンとか、救援物資は常に送っていました。経営陣が変わって、学校の環境が少しずつよくなっていったのでありがたかったです。最後の夏に『和歌山で一番になっとけ』と息子に言っていたんですけど、いい投球を見せてくれてよかったですね」
10人の野球部員が引退し、和歌山南陵野球部としては一区切りになる。あとは学校法人として課せられた、生徒募集停止の措置が解除されるかにかかっている。
エースの松下のように大学で野球を続ける部員もいれば、故障のため今夏2打席に留まった背番号10の畑中公平のように野球をやめる部員もいる。これからどんな進路を歩む予定なのか尋ねると、畑中は晴れやかな表情でこう答えた。
「航空自衛隊に入隊して、国の空を守りたいと考えています。和歌山南陵でストライキとか、菓子パン1個の朝ご飯とか、寮のトイレの天井から水が降り注ぐとか、ほかの高校ではできないような、いい体験ができました」
和歌山南陵での3年間を乗り越えられれば、どんなに厳しい世界でも生きていけそうですね。そう聞くと、畑中は「行ってみないとわからないですけど、そうですね」と笑った。
少子化が進む現代にあって、和歌山南陵の経営難は「対岸の火事」ではない。これから校歌のフレーズのように「一歩前へ」進めるかどうかは、私立高校が生き残るための試金石になるのかもしれない。
(おわり)
4日目第1試合 中京大中京(愛知)-宮崎商(宮崎) 8:02~10:21
一二三四五六七八九十計HE
宮 崎 商000002100 382
中 京00020020X 4110
4日目第2試合 神村学園(鹿児島)-木更津総合(千葉) 10:57~13:31
一二三四五六七八九十計HE
木更津総001002101 573
神村学園01000241X 8101
4日目第3試合 岡山学芸館(岡山)-聖カタリナ(愛媛) 14:08~16:16
一二三四五六七八九十計HE
カタリナ000000000 051
学 芸 館00001000X 140
4日目第4試合 日本航空(山梨)-掛川西(静岡) 16:52~19:22 18:29点灯 6回表から
一二三四五六七八九十計HE
掛 川 西300100400 8151
日本航空220000000 4120
⚾明日の熱闘甲子園組み合わせ(5日目 2回戦)
08:00~ 鳴門 渦潮-早稲 田実
10:35~ 聖光 学院-鶴 岡 東
☆☆ 13:10~ 大 社 -報徳 学園
15:45~ 創 成 館-白樺 学園
📝変化球というのは、甘く入れば…迷わず振った神村学園 高嶋仁の目
https://news.yahoo.co.jp/articles/095579076bcf6712fe14a9c2a8ea7c298a9baf5d
(10日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 神村学園8―5木更津総合)
先行されて苦しい状況をはね返した神村学園。昨夏ベスト4のメンバーが多く残っており、地力を感じさせました。
同点の七回、正林輝大右翼手が後方の飛球に追いつきながら捕れず、三塁打にしてしまいます。これをきっかけに勝ち越されました。正林選手はチームの中心、今大会屈指の強打者です。
大黒柱がミスをしたことでシュンと落ち込むところですが、逆にチーム全員が燃えたような気がします。その裏、集中打で一挙4点を奪いました。
なかでも3番今岡拓夢選手の勝ち越し三塁打は見事でした。継投した2番手の右横手投げ・石沢順平投手の代わりばな、初球のスライダーを迷わず振り抜き、左中間に運びました。
甲子園で活躍するには、変化球を狙って打てることが必要条件です。変化球というのは甘く入れば、ただのスローボールみたいなもの。だから、狙ったら打ちやすいのです。
変化球の狙い打ちは、木更津総合にも見られました。クーリングタイム明けの六回表、先頭の庄村佑心選手、4番の井上陸選手がいずれも初球の変化球を安打し、2点を奪いました。
残念だったのは守備の乱れです。3失策に加え、内野手が打球を待って内野安打にしたり、外野手が前に突っ込みすぎて後逸して長打にするなど記録に表れないミスもありました。
甲子園では、防げるミスは防がないと勝てません。
📣甲子園に導入された朝夕2部制 長い一日になりました
https://news.yahoo.co.jp/articles/99c8d71e8c05c5eb567f1eae69812f9a287d8a84
年々、夏の暑さが増している中、今大会は第3日までは一日3試合を「午前の部」と「夕方の部」に分ける「朝夕2部制」が導入された。
熱中症対策のため、猛暑の時間帯を避けた措置だという。第1日は午前8時30分から開会式を行い、第1試合は午前10時、それから第2試合は午後4時、第3試合は同6時30分の開始予定で、プロ野球のナイターの開始時間より遅い設定だった。第2、3日は第1試合が8時、第2試合が10時35分、それから空いて第3試合は午後5時から行われた。
この3日間のチケットは午前と午後で別になっており、観客を入れ替えた。ただ、高校野球の場合は一日通して3試合、4試合と楽しむ愛好家が多い。それだけに、午後の1試合だけではちょっと…と考えた人が多かったのだろう、空席がかなり目立った。
長~い一日。第1日の第3試を戦った智弁学園のナインは開会式出席のため午前5時10時起床。式後にいったん宿舎に戻って昼寝の時間も設けられたというが、ほとんどの選手は寝られなかったという。しかも、第3試合の開始は予定より遅れて午後6時52分になったうえ、延長十一回までもつれて終了は午後9時36分! 普段は寮で午後9時半就寝だというから、いつもは布団に入っている時刻に試合をしていたことになる。
取材する記者も大変だった。開会式から第3試合までカバーしようとすれば、暑い中、半日も甲子園球場にいなければならない。しかも初日は第3試合終了後に2部制を検証する高野連の記者会見もあったので、夜11時まで甲子園で原稿を書くことに。なんと15時間以上の勤務となってしまった。
💢甲子園応援団にハプニング 高速道路渋滞で到着遅れる…掛川西-日本航空の第4試合
https://news.yahoo.co.jp/articles/f63a912caae52fef1036c762a3d932eec81f9ab4
大会本部が発表
第106回全国高校野球選手権大会の大会本部は10日、第4試合の掛川西(静岡)-日本航空(山梨)の応援団が高速道路の渋滞のため到着が遅れていると発表した。
試合は午後4時45分に開始予定。掛川西はすべての応援団バス(44台)が到着済だが、駐車場からの移動などのために全員の入場までまだ時間がかかる見込みだという。
日本航空の応援団バス10台は、先頭の1台が到着しており、残りのバスも順次到着するが全員の入場には時間要すると発表された。
👣宮崎商、アクシデントで7度Vの強豪からの金星逃す 令和の県勢初勝利ならず
https://news.yahoo.co.jp/articles/6eaec6cc301b999f059f13b3de4f4bb76a9d1028
◆全国高校野球選手権1回戦 中京大中京4―3宮崎商(10日・甲子園)
夏の甲子園7度優勝を誇る強豪からの金星は、思わぬアクシデントで遠のいた。16年ぶりに夏の甲子園のグラウンドに立った宮崎商は中京大中京を相手に1点差の惜敗。令和に入って県勢未勝利の甲子園で初勝利を刻めなかった。「選手たちが頑張って自分たちの展開でゲームを運んでいたんですけど。私がいろいろしてあげれれば逃げ切れと思うんですが、悔いが残りました」と橋口光朗監督は一度はリードを奪う展開から逆転を許した惜敗に悔しさを見せた。
7回までは互角の戦いだった。4回に先制を許したが、6回に同点に追いつき7回に4番上山純平(3年)の適時打で勝ち越しを決めた。残り2イニングを必死に守って逃げ切るだけ。「最後に1点上回って勝つ」。1年間取り組んできた「宮商野球」を大舞台でそのまま体現していた。
ところが7回裏にアクシデントが起きた。宮崎大会で遊撃と抑え投手の2役でチームを勝利に導いてきた中村奈一輝(3年)が守備中に左脚のふくらはぎがつり、マウンドに立てなくなったのだ。治療を経て遊撃に戻ったが、宮崎大会ではピンチになればカウントの途中でも遊撃から緊急登板してリードを守ってきた「守護神」のアクシデントで、投手交代に誤算が生まれた。7回2死一、三塁から先発の上山が2連打で2失点と逆転を許した。「上山はよく頑張ったと思います。もし中村をマウンドに上げて抑えたとしても、遊撃の守備に戻れなくなる恐れがあった。彼が抜けたらチームが成り立たない」。橋口監督は精神的にもチームの支柱となっている中村の存在の大きさをわかっていた。不運なアクシデントにも橋口監督は「そういうのも含めて甲子園なので」と聖地の怖さを改めて痛感した。
中村は「先頭打者を遊ゴロに取ったとき痛みがきたんです。大丈夫かなって」。ベンチに戻り8分間の治療を受けて再び遊撃の守備につくとベンチからは「ナイキ、お前が引っ張っていけ」と声をかけられた。「みんなに支えられているんだなと思った。出るからには全力でやりきらないと試合に出ない人たちに申し訳ないと思った」。マウンドに上がらなくても遊撃の守備でみんなを引っ張ろうと気持ちを入れた。9回1死から打席に立ったが空振り三振。「足がつってでも塁に出ようと思ったんですけど、最後にカットボールに手が出てしまった。悔いが残ります」と最後の打席を振り返った。
3年前は新型コロナウイルス感染がチーム内に広がり初戦を戦わずに出場辞退した。「3年前の先輩の分も勝ちたい」と意気込んで臨んだ甲子園だった。試合の2日前には宮崎県で最大震度6強の地震が発生するなど、様々な状況が選手を取り巻いていた。「先輩の思いも背負ってプレーしようとみんなで話していた。勝てなかったけど、先輩たちに泥くさいプレーを見せられたのは良かった。宮崎の人たちにも少しでも勇気づけるプレーをできたかなとは思います」と中村は振り返る。
この悔しさは次のステージで晴らす。「プロ志望届を出します」とチームを引っ張り甲子園まで来た中村は将来をまっすぐ見つめていた。
☝「ずっとつっていました…」神村学園の主砲・正林輝大、3回から足がつりながらも最後まで見せ続けた執念
https://news.yahoo.co.jp/articles/1ff5888cb0fae935e0ca83be1f9a0023ba7f7978
◆全国高校野球選手権1回戦 木更津総合5―8神村学園(10日・甲子園)
ぐらつく自らの両足を、神村学園・正林輝大は〝主砲のプライド〟で、必死に支えていた。思いも寄らなかった〝衝撃〟に襲われたのは、空振り三振に終わった3回のこと。「その打席で右足がつって、その後の守備でも、ずっとつっていました…」。
2点差を追う6回の第3打席では、カウント2―2となった5球目の直後、木更津総合の捕手・羽根徹平の右足がつり、治療のため試合が8分間中断。再開後に正林は空振り三振も振り逃げで出塁したが「あそこで、両足がつりかけて…」。
この出塁を皮切りに、5番岩下吏玖の中越え三塁打で正林が生還するなど、3―3の同点に追いついたが、その直後の7回、木更津総合・吉沢梢真の打球が右翼・正林の頭上を襲い「風と足の影響で、追い切れませんでした」。グラブに一度は当てながらもボールを落としての三塁打となり、次打者の右犠飛で再び勝ち越しを許してしまった。
まさしく、両足は限界ギリギリだった。そんな中でも「チームとしてもいい感じで、流れっていうのが来ている感じがしていたので、ここで止めたら流れも止まっちゃうんじゃないかと思ったので、なんとか頑張ってやりました」。
7回、2番・入耒田華月の中越え二塁打で再び同点とし、3番・今岡拓夢の左越え三塁打で勝ち越して迎えた第4打席。正林は何度となく打席を外して両足を伸ばし、必死に耐えてのスイングは三ゴロも、相手の一塁悪送球でチャンスが拡大。この回一気に4点を奪って木更津総合を突き放した。
「きょうは死闘になると思ったんで、だから相手のキャッチャーの羽根君も足がつったりとか、いつも以上に選手は頑張ろうとして、いつも以上にエネルギーを使っているから、こういうことになると思っていました」と小田大介監督は、正林が最後の最後まで見せ続けた〝執念〟を褒めた。
低反発バットが採用され、大会3本塁打に終わった今春のセンバツで、文句なしのスタンドインを見せた一人が正林で、その長打力と打撃技術は、プロのスカウト陣も注目する逸材だ。2回の第1打席では、左中間へ鋭いライナーを放ちながら、木更津総合のレフト・山口然がダイビングキャッチ。「あれは相手がうまかったですね。いい打球は行ってるので、あれがヒットになってないから、と正林には悩んでほしくないですね」と小田監督。両足のアクシデントも重なり、初戦は4打席無安打に終わったが「打球としては別に全然悪くなかったんで、修正する部分も特にない」と正林。ただ、昨夏の甲子園でも足がつった経験があり「体がつらないような体作りをしてきました」。
屋外での気温が高くなると、体脂肪が体熱を放散させる作用があることを知り、鹿児島県大会中には体脂肪率を「これがベストだと思う」という12~13%をキープ。ただ甲子園に入ってから、体重を2キロ減の84キロに落とし、体調を整えたのだが「それで体脂肪率も落ちてしまったんで、足がつってしまったのかな、という感じです」と正林。暑い夏の甲子園で、体調をいかにして整えるのか、その難しさを痛感させられた一戦になったが「正林には勉強になったと思うし、それをカバーし合って勝ち上がるのがチームだと思う」と小田大介監督。3季連続の甲子園は、本気で狙う全国制覇が最終目標。主砲の〝危機〟をチーム一丸で救っての初戦突破には、大きな価値がある。
👣治療による8分間の中断で変わった流れ 木更津総合・羽根徹平「投手に申し訳ない」と涙
https://news.yahoo.co.jp/articles/79276b6c492a2f3332d80b95ff1cc3438c6043f8
木更津総合(千葉)の主砲・羽根徹平捕手(3年)が、無念の涙を流した。
6回表に3―1と勝ち越して迎えた裏の守り。1死で神村学園の4番・正林輝大右翼手(3年)を迎え、4球目を受けたあと羽根の右足ふくらはぎがつってしまった。治療のためベンチに退き、試合は8分間中断。そこで流れが変わった。
再開後、正林から空振り三振を奪ったものの、完全捕球できずボールを一塁へ。それが悪送球となって、振り逃げでの出塁を許した。続く5番・岩下吏玖三塁手(3年)の痛烈なセンターライナーに対し、中堅手がダイビングキャッチを試みたものの、打球を後逸して適時三塁打に。その後、6番・上川床勇希左翼手(3年)の中前打で同点に追いつかれた。
「流れを変えないようにしようと思ったが、自分のミスで変えてしまった。ピッチャーに申し訳ないです」と羽根は涙。7回表に再び1点をリードしたが、その裏に4点を奪われ、初戦突破を逃した。
☟日本航空エースが投球中に鼻血 詰め物入れて復帰も…直後に代打で交代 酷暑の影響か
https://news.yahoo.co.jp/articles/0a6c3715214ca024d402f6217019d6a9fcd1737b
2回の投球中に症状を訴えて治療を行った
第106回全国高校野球選手権大会で10日に行われた第4試合の掛川西(静岡)-日本航空(山梨)で、日本航空の高木秀人投手が鼻血を出し、治療のため、試合が一時中断した。
高木は2回2死一、二塁から3番打者の佐藤に初球を投げたところで、治療のためにベンチへ。数分後に左の鼻に詰め物を入れてマウンドに戻った。復帰後はそのまま佐藤を遊ゴロに打ち取った。中断の間、日本航空の選手が掛川西の走者に水分を提供するシーンも見られた。
しかし、その裏の攻撃で打順が回ってくると早川隼斗に代打を送られた。今大会では開幕した7日から9日までは、酷暑対策として、気温が高い時刻に試合を行わない2部制が導入されていたが、この日から1日4試合で例年通りのスケジュールで行われていた。
📝智辯和歌山に挑んだ和歌山南陵10人の野球部員たち エースは「もうヒジがぶち壊れてもいいから頑張るわ!」と自己最速を更新した
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/hs_other/2024/08/07/10_2/
18人の青春〜和歌山南陵高校物語(4)
7月23日、紀三井寺球場に到着すると、開場前から複数のテレビ局の取材クルーが和歌山南陵高校の応援団の一挙手一投足をカメラで追っていた。この日、和歌山南陵の野球部は和歌山大会3回戦で優勝候補筆頭の智辯和歌山と対戦することになっていた。
「レゲエ校歌」の効果を感じずにはいられない光景を目にして、甲斐三樹彦理事長はこんな言葉を口にした。
「批判もされましたけど、私は子どもたちが学校でいい表情をしてくれていれば、それでいいんです。ウチの学校は完璧ではないことは間違いないですし、それこそ『一歩前へ、一歩前へ』とやっていこうや、と考えています」
【約40人ものブラスバンドの友情応援】
和歌山南陵の吹奏楽部員は2人だけ。それでも、強力な助っ人が現れた。SNSを通じてブラスバンドの演奏者を募ったところ、約40人もの応募があったのだ。なかには山梨県から応援に駆けつけた人もいたという。
在校生唯一の女子生徒である西菊乃とともに吹奏楽部を支えてきた瀧本楓太は、感慨深そうにこんな思いを口にした。
「僕たちは自宅から学校に通っているんですけど、野球部とバスケ部のみんなは寮のガスが止まったり、ご飯が出なかったりつらい思いをしても、学校に残って頑張っていました。友だちが夜遅くまで練習している姿を見てきたので、自分も引き下がりたくなかったんです。今日はたくさんの人と応援できるのはうれしいですね」
野球部員は10人だけ。初戦の紀北農芸戦では1番打者の佐々木陸斗がスライディング時にヒザをすりむいて試合が一時中断し、捕手兼一塁手の中村聖が頭部死球を受けるハプニングもあった。さらには背番号10でチーム唯一の左打者である畑中公平が、左足ふくらはぎの肉離れを負い全力疾走ができない状況でもあった。そんなチームにあっても、監督の岡田浩輝は強気な言葉を口にした。
「南陵はここまで......と思っている人もいるかもしれませんが、私たちは勝てると思って臨みます。1回勝つことが目標ではなく、甲子園に行くためにやっていますから」
岡田監督の言葉は強がりには聞こえなかった。現にエース右腕の松下光輝という県内でも有数の好投手を擁していたからだ。
松下は身長176センチ、体重75キロのスリークォーターで、最速143キロのストレートは数字以上に体感スピードがある。初戦の紀北農芸戦では8回を投げ、12奪三振無失点と危なげない投球を見せている。
そんな松下も今年1月に右ヒジ痛を発症し、何とか今夏に間に合わせた経緯があった。部員が10人しかいないことで、「自分が試合に出なければ」という責任感が故障を悪化させるリスクもあったはずだ。それでも、松下は「10人やからこそ練習の効率が上がったり、チームワークができたりしたので、部員が少ないことは悪いとはとらえていません」と気丈に語った。
【自己最速の146キロをマーク】
松下は智辯和歌山の強打線を三者凡退に抑える快調な立ち上がりを見せる。ところが、2回裏の守備に落とし穴が待っていた。2つのエラーが絡み、智辯和歌山に2点を先取される。智辯和歌山はこの日に先発した2年生エースの渡邉颯人ら複数の好投手を擁するだけに、序盤から重い失点になってしまった。
それでも、この日も和歌山南陵の応援スタンドは元気だった。2回の攻撃開始前には「レゲエ校歌」が場内に流れた。バックネット裏スタンドは相変わらず困惑したムードだったが、和歌山南陵の応援スタンドでは校歌のリズムに合わせてタオルを左右に振る観衆が続出。上半身ユニホーム姿の甲斐理事長は一際大きな声を張り上げ、普段は物静かという和歌山南陵唯一の女子生徒・西はどすの効いた大声で「打ち返せ〜!」と叫んだ。
5回表の攻撃では、山塚虎大朗と大田拓実の連打でチャンスをつくり、和歌山南陵スタンドの盛り上がりは最高潮に達した。それでも、智辯和歌山の堅い守備陣から得点をもぎとることはできなかった。
その裏、ここまで奮闘してきた松下が智辯和歌山の上田潤一郎に本塁打を浴びるなど、5安打5失点と崩れる。得点差は7に広がった。6回裏の守備が始まる直前、松下はチームメイトの前でこんな宣言をしている。
「もうヒジがぶち壊れてもいいから頑張るわ!」
6回裏、一死から山田希翔を打席に迎えると、松下は右腕を全力で叩きつける。自己最速の144キロが出たと思ったら、次の球で145キロ、その次の球で146キロと自己最速を1球ごとに更新していく。松下はのちに「最後まであきらめずに出しきろうと思ったら、最速が出ていました」と振り返った。
試合は0対7のまま、7回コールドで和歌山南陵は敗れた。試合後、松下は涙を拭いてこんな思いを語っている。
「スタンドからいつもより大きな応援が聞こえて、力になりました」
一方で、岡田監督は「エラーからつけ込んで点をとっていくところが、やはり強豪だなと感じました」と完敗を認めた。
【10人の野球部員が引退】
岡田監督は野球部監督を務めると同時に、和歌山南陵の寮監として勤務していた。「職業として学校をやめたいと思う時期はなかったのですか?」と尋ねると、岡田監督は「もちろんありました」と語ったうえでこう続けた。
「それでも、この子たちと最後までやりたい思いが勝ちました。今日はこれだけ多くのお客さんが来てくれて、本当にありがたかったですね」
取材が終わると、選手たちは応援に訪れた家族と記念撮影に興じていた。息子を預けた家族にとっても、不安が募る3年間だったに違いない。エース右腕・松下の父親であり、保護者会会長の松下真也はこんな心境を打ち明けた。
「(和歌山南陵の経営難が報じられて)ウチは『どうする?』と聞いたら、本人が『おる』と言ったので転校はしませんでした。レトルトカレーとかスパゲティ、ラーメンとか、救援物資は常に送っていました。経営陣が変わって、学校の環境が少しずつよくなっていったのでありがたかったです。最後の夏に『和歌山で一番になっとけ』と息子に言っていたんですけど、いい投球を見せてくれてよかったですね」
10人の野球部員が引退し、和歌山南陵野球部としては一区切りになる。あとは学校法人として課せられた、生徒募集停止の措置が解除されるかにかかっている。
エースの松下のように大学で野球を続ける部員もいれば、故障のため今夏2打席に留まった背番号10の畑中公平のように野球をやめる部員もいる。これからどんな進路を歩む予定なのか尋ねると、畑中は晴れやかな表情でこう答えた。
「航空自衛隊に入隊して、国の空を守りたいと考えています。和歌山南陵でストライキとか、菓子パン1個の朝ご飯とか、寮のトイレの天井から水が降り注ぐとか、ほかの高校ではできないような、いい体験ができました」
和歌山南陵での3年間を乗り越えられれば、どんなに厳しい世界でも生きていけそうですね。そう聞くと、畑中は「行ってみないとわからないですけど、そうですね」と笑った。
少子化が進む現代にあって、和歌山南陵の経営難は「対岸の火事」ではない。これから校歌のフレーズのように「一歩前へ」進めるかどうかは、私立高校が生き残るための試金石になるのかもしれない。
(おわり)